松山の餅
雑煮に餡餅を入れる
ユニークな風習が残る
「甘い」好きな松山
松山には多様な「餅文化」があります。
一つは「おふく」。もち米にうるち米を混ぜてついた餅で、米のつぶつぶ感が残る独特の触感を持っていて、偶然米が混じったのが始まりと言われています。
二つ目は「塩餡餅」。砂糖を使わずに作られ、法事など平時でないときに食されたという記述が多く残る餅です。小豆本来の味を堪能できるツウの餅とも言われていますが、今では希少な食べ物になっています。
このほかにもヨモギ餅、キビ餅、里芋餅、麦餅と、道後平野の恵みをもち米に混ぜることにより、この地方では多様な餅文化が育まれました。
特筆の餡餅雑煮はお隣香川県が有名ですが、全国でも珍しい食風習が隣県同士にあるのは、明治の初め、愛媛と香川がひとつの県だったことや、文化の運び手だった四国遍路の影響だったりと、人の往来が作用しているのかもしれません。
雑煮には、塩餡餅やおふくを入れる家庭もあり、一つの椀に2種類の餅を入れる”複数派”も。大家族があたり前だったころは、リクエストを聞くのがひと苦労だったかもしれませんね。
米がつぶれるまでのつき時間は、うるち米10分、もち米3分。この時間差でうるち米のつぶつぶ感が残る。混ぜる比率はさまざま。雑煮に入れると、きりたんぽのような味わいになる。
砂糖が貴重だった頃に生まれたといわれるが、砂糖を使わないため日持ちはしない。栄養のバランスがとれた食品で、小豆本来の美味しさを引き出す究極の餡餅。
変わり種が多い松山でも、主流はもち米だけの白い丸餅。この地方では「すや餅」と呼ぶ。「すや」とは、混じり気のない「素」に接尾語「や」がついたのではとされる。